21年3月:サンセイ事件:使用者側弁護士の労働法メルマガ

今回のメルマガ【2021年3月号】目次

1 (労務×過労死×安全配慮義務×取締役×任務懈怠)

従業員の過労死について、会社の安全配慮義務違反が認められるとともに、取締役の任務懈怠につき、第1審の判断が覆され責任が認められた例


2 TIT メルマガ裁判例動画解説:No.820213月号

(労務×休職制度×同一労働同一賃金×雇止め)

時給制契約社員に休職制度を適用していないこと等につき、労契法20条に反せず、雇止めを有効とした例

動画(無料)に、興味のある使用者側の方々は、⇊⇊⇊をご参照下さい。

1 従業員の過労死につき、安全配慮義務違反が認められ、取締役の任務懈怠につき、責任が認められた例



【判例】

 

事件名:サンセイ事件

判決日:東京高判令和3年1月21日

 

 

【事案の概要】


被告会社従業員が脳出血により死亡し、労基署による労災認定がされたことなどから、その相続人らが、被告会社に対しては安全配慮義務違反に基づき、被告取締役らに対しては任務懈怠責任に基づき、損害賠償請求をした。特に、被告取締役らの過失などが問題となった事案

 


【判旨(「」内は判旨の一部抜粋。下線部、①②などの数字、装飾等は引用者による。)】


※一部、判旨の引用する原審の判旨

 

 

・当事者

故P7

会社従業員。平成23年8月7日、脳出血により死亡

控訴人A

故P7の妻

控訴人B

故P7の子

控訴人C

同上

被控訴人

会社(治工具の製作販売等を目的とし、神奈川県に本店、岩手県に支社を置く株式会社)

被控訴人D

被控訴人代表取締役(当時)

被控訴人E

被控訴人取締役会長(当時)

被控訴人F

被控訴人専務取締役工場長(当時)

 

 

・故従業員の時間外労働時間

発症前1か月 

85時間48分

発症前2か月 

111時間09分(2か月平均 98時間28分)

発症前3か月 

88時間32分 (3か月平均 95時間09分)

発症前4か月 

50時間50分 (4か月平均 84時間04分)

発症前5か月 

63時間20分 (5か月平均 79時間55分)

発症前6か月 

75時間43分 (6か月平均 79時間13分)

 

 

1 「争点(2)(被告会社の安全配慮義務違反の有無)について」

 

⑴ 被告会社の安全配慮義務違反の認定

 

ア 規範について

 

「使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」

 

イ 被告会社の安全配慮義務違反の有無について

 

 「故P7の本件脳出血の発症前における1か月当たりの時間外労働時間は」、「発症前4か月間における平均が80時間を超えていたこと,発症前2か月間における平均が98時間を超えていたこと,発症前3か月,2か月及び1か月においてそれぞれ88時間32分,111時間09分,85時間48分であった」。

そのため、「故P7は,遅くとも本件脳出血の発症前2か月の時点において著しい疲労の蓄積をもたらす業務に従事していたと認められる。」

 

また、「故P7の業務は,」「顧客からの依頼を受けて各部署との間で調整を行い,納期までに配送することを要するものであり(同(2)ア),営業技術係の係長としての職責があった」ため、「労働密度は低いものでなく,相応の精神的緊張を伴うものであった」。

 

よって、「被告会社としては,遅くとも平成23年6月初め頃の時点において,故P7の時間外労働を制限するなどの方法によって業務の負担を軽減する義務を負っていたと解すべきである。ところが,被告会社は,上記の義務を尽くさず,故P7に対して,発症前1か月においても1か月当たり85時間48分に及ぶ時間外労働に従事させ,本件脳出血の発症に至らしめたのであるから,安全配慮義務の違反を認めるのが相当である。」

 

⑵ 被告会社の反論について

 

ア 三六協定について

 

「三六協定は労働基準法所定の時間外労働及び休日労働をするに当たって行政官庁に届け出ることが法律上求められている書面にすぎないし,被告会社における三六協定の内容は時間外労働時間を1か月当たり80時間まで延長することができるなどとするものである」

 

「故P7はそれを超える時間外労働をしていたのであるから,その締結によって被告会社が必要な措置を講じたことにはならない。」

 

イ 産業医の面接について

 

「安全衛生委員会において産業医の面接を受けるとされた点についても,産業医との面接指導が必要とされるのは残業時間が月100時間以上の場合に限られること,故P7は健康診断の結果について産業医と面談をしたにもかかわらず,産業医が被告会社に対して何らの勧告をしていないことからすれば,産業医との面談が故P7の業務を軽減するための有効な措置であったとは考え難い。」

 

ウ 衛生管理者による指導について

 

「衛生管理者による指導についても,P9が食事面での指導や健康診断の受診を促したりしたという程度にとどまり,故P7の業務を軽減させるための実効的な措置とはいえない。」





2 「争点(3)(被告取締役らの任務懈怠及び悪意又は重過失の有無)について」

 

ア 規範について

 

「会社の取締役は,会社に対する善管注意義務として,会社が使用者としての安全配慮義務に反して労働者の生命,健康等を損なう事態を招くことのないよう注意する義務を負い,これを懈怠して労働者に損害を与えた場合には会社法429条1項に基づく損害賠償の責任を負うと解される。」

 

 

イ 被控訴人Fについて

 

被控訴人Fは、「残業時間集計表によって平成23年6月分及び7月分の故P7の残業時間がいずれも80時間を超えていると認識していたこと(前記(1)エ,(2)ウ)に加え,P8支社の工場長の地位にあるとともに故P7の直属の上司であり(前記(1)ア),故P7の業務内容及び仕事量を直接把握しており,故P7が高血圧を呈していたことや残業時間が1か月当たり80時間を超えると過労死の危険が高いことも知っていたと認められる。そうすると,被告P6は,被告会社の取締役として,遅くとも平成23年6月分の残業時間の集計結果の報告を受けた同月23日頃には,被告会社が故P7の生命,健康等を損なう事態を招くことのないように,故P7の業務の負荷を軽減するための是正措置を講じるべき義務があったのに,これを怠ったことにより,故P7の死亡という結果を招いたことについて」「任務懈怠があり,このことについて少なくとも過失があったことは明らかである。」

 

「そして,被控訴人Fは,神奈川県内に所在する被控訴人会社の本店から遠く離れた岩手県内に所在するH支社に専務取締役工場長として常駐し,同支社における実質的な代表者というべき地位にあった上,平成23年4月に故Gの所属する営業技術係に配置換えによる1名増員の措置を講じていたのに,故Gの同年6月分の残業時間が80時間を超えていた旨の集計結果の報告を受けたことにより,故Gに過労死のおそれがあることを容易に認識することができ,実際にもかかるおそれがあることを認識していた。それにもかかわらず,被控訴人Fは,従前行っていた一般的な対応にとどまり,故Gの業務量を適切に調整するための具体的な措置を講ずることはなかったため,故Gの発症前1か月の時間外労働時間(85時間48分)が発症前2か月のそれ(111時間09分)より軽減されたとはいえ,依然として80時間を超えており,故Gに過労死のおそれがある状態を解消することはできなかった。その後も故Gの業務量を適切に調整するための具体的な措置が講ぜられることはなかった上,故Gが間もなくお盆休みに入り長時間の時間外労働から解放されることが予定されていたとはいうものの,むしろ,故Gにとっては,その業務を前倒しで処理しておく必要があったため,平成23年8月分で見ても,過労死をもたらすおそれのある時間外労働が続いている状態に変わりはなかった。

イ 以上のような事情を総合すれば,被控訴人Fにおいては,故Gの過労死のおそれを認識しながら,従前の一般的な対応に終始し,故Gの業務量を適切に調整するために実効性のある措置を講じていなかった以上,その職務を行うについて悪意までは認められないとしても過失があり,かつ,その過失の程度は重大なものであったといわざるを得ないから,被控訴人Fは会社法429条1項所定の取締役の責任を負うというべきである。」

 

ウ 被控訴人Dについて

 

被控訴人Dは、被控訴人F「から報告を受け,残業報告書の内容を確認することにより,故P7を含むP8支社の従業員の時間外労働時間について把握し,従業員の増員等の対策を講じようとしていた」。

 

また、「被控訴人会社の本社に常駐する代表取締役である被控訴人Dが,遠隔地に所在する支社の増員の実効性の有無及び程度を検討して更なる措置を講ずべきか否かを適切に判断するためには更に一定程度の期間が必要であったと考えられる。」

 

よって、「被控訴人Dにおいて,他の取締役である被控訴人Fに対する監視義務ないし監督義務があることを踏まえても,そもそも任務懈怠があったとはいえないか,仮にこれがあったとしても,上記措置を講じなかったことについて」「悪意又は重過失を認めることはできない。」

 

エ 被控訴人Eについて

 

「被控訴人会社の代表取締役である被控訴人Dにおいて,上記で判示したとおり,任務懈怠が認められないか,少なくとも悪意又は重過失が認められないことに照らせば,平成22年12月に同代表取締役を辞任し,取締役会長の地位にあった被控訴人Eにおいても,任務懈怠が認められないか,少なくとも悪意又は重過失は認められないというべきである。」

 

 

3 「争点(4)(因果関係の有無)について」

 

ア 規範について

 

「労働者が基礎疾患を有している場合であっても,業務に起因する過重な精神的・身体的負荷によってその基礎疾患が自然経過を超えて増悪し,脳出血を発症するに至ったときは,業務による過重負荷が脳出血の共働原因となったものとして,労働者の従事していた業務と脳出血との間の相当因果関係を肯定するのが相当である。」

 

イ あてはめ

 

「本件脳出血の発症当時,故P7は重度の高血圧を呈しており,自然経過として脳出血を発症する可能性は高かったと認められる」

 

しかし、「業務による過重負荷によってその自然経過を超えて本件脳出血を発症させるに至ったと考えられるから,業務と本件脳出血による死亡との間に相当因果関係を認めるのが相当である。」

 

 

4 「争点(6)(原告らの損害の額)について」

 

損害は、「損害額(逸失利益3180万8509円,慰謝料2700万円,葬儀費用150万円)を過失相殺の類推適用によりその5割を減じた額(逸失利益1590万4254円,慰謝料1350万円,葬儀費用75万円)を控訴人らが法定相続分割合により相続し,上記(2)の損益相殺をした後の残額に上記(1)エの弁護士費用を加算した結果,控訴人Aの損害は745万円(逸失利益0円,慰謝料675万円,葬儀費用0円,弁護士費用70万円),控訴人B及び同Cの損害は各805万1063円(逸失利益397万6063円,慰謝料337万5000円,葬儀費用0円,弁護士費用70万円)となる。」

 

 

【結論】


裁判所は、被告会社及び専務取締役工場長に対し、連帯して、合計約2355万円の支払いを命じた。

 


【コメント】

 


本件は、取締役の任務懈怠における重過失について、第1審と控訴審とで同様の事実を認定しながら、判断が分かれたという点で、限界事例であったと言えます(第1審は、被控訴人Fの重過失を否定)。

 

もっとも、会社及び取締役などの役員は、従業員の過労死を防止し違法とされるリスクを減少させるため、判旨を前提に、例えば、以下の対策をとることが有用です。

 

① 36協定の内容を遵守すること

② 適切な産業医を選任し、適切な面接指導及び勧告を実施してもらうことなどにより、従

業員の業務軽減のため有効な措置を行うこと

③ 適切な衛生管理者を選任し、適切な指導を実施してもらうことなどにより、従業員の業

務軽減のため実効的な措置を行うこと

④ 会社として業務災害補償保険、及び役員として会社役員賠償責任保険(D&O保険)、な

どの保険に加入すること

⑤ 社内規則などにより、役員の業務範囲を限定し、明確にすること



2 時給制契約社員に休職制度を適用していないこと等につき、労契法20条に反せず、雇止めを有効とした例



【判例】

 

事件名:日本郵便(休職)事件

判決日:東京高判平成30年10月25日

 

 

【事案の概要】

時給制契約社員が会社に対し、雇止めが違法かつ無効であるとして、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案。時給制契約社員に休職制度を適用していないこと等につき、労契法20条に反するかが争点となった。

 

【判旨(「」内は判旨の一部抜粋。下線部、①②などの数字、装飾等は引用者による。)】

※一部、判旨の引用する原審の判旨

 

 

1 「有給の病気休暇の有無及び休職制度の有無について、その相違が不合理であると評価することができるか」について

 

⑴ 規範

 

「労働契約法20条は、有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と無期労働契約を締結している無期契約労働者の労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない旨を定めている。同条は、有期契約労働者については、無期契約労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」という。)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解され、ここにいう「不合理と認められるもの」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいうと解するのが相当である」

 

⑵ あてはめ①:期間の定めがあることにより

 

「まず、被控訴人において、病気休暇及び休職制度に関して前記(1)説示のとおりの相違があるのは、正社員については社員就業規則の定めが適用され、期間雇用社員については期間雇用社員就業規則が適用される結果であり、このような相違は、雇用契約の期間の定めの有無に関連して生じたものであると認められるから、期間の定めがあることにより生じたものと認められる。」

 

⑶ あてはめ②:比較対象者論

 

「次に、時給制契約社員である控訴人との比較対象とすべき正社員について検討するに、前記前提事実によれば、時給制契約社員は、郵便局等での一般的業務に従事し、時給制で給与が支給されるものとして採用された者であり、特定の定型業務に従事し、担当業務の変更は予定されておらず、班長等として班を総括するなどの業務は行わず、配置転換も昇任昇格も予定されていないなど、担当業務の種類や異動等の範囲が限定されていることが認められる。

 これに対し、正社員については、前記前提事実のとおり、管理職、総合職、地域基幹職及び一般職の各コースが設けられ、それぞれが異なる業務の内容を有し、これに伴う責任の程度も大きく異なるものとみられるところ、時給制契約社員の労働条件が期間の定めがあることにより無期労働契約者の労働条件と相違する場合にその相違が不合理と認められる否かを判断するに当たっては、上記各コースの中で、時給制契約社員の職務の内容等に類似する職務の内容等を有するものを比較の対象とするのが相当であると解される。したがって、正社員のうち、一般職を比較の対象とするのが相当である。」

 

⑷ あてはめ③:職務の内容等の相違

 

ア 「ア」「イ」

 

 

職務の内容(業務の内容、及び業務に伴う責任の程度)

一般職

①窓口営業、郵便内務、郵便外務又は各種事務等の標準的な業務に従事

②郵便局業務における主力社員として、営業・業務等に関する習熟度やスキルを高め、その能力を発揮

③役職層への登用はない

④勤務地は原則として転居を伴う転勤がない範囲

⑤【人材育成体系】一般職の郵便コースの場合、スキルの観点では、採用後7年目まで(育成期)は担当業務を習得し、求める人材像は、担当する担務での応用的業務、後輩に助言、アドバイスができる人材。その後15年目まで(熟練期)は習得したスキルの専門性を高め社内スキル認定を取得し、求める人材像は各担務の中心として応用的かつ困難業務を担う人材、後輩社員に指導できる人材。16年目以降(発展期)はコミュニケーションスキルを発揮し班運営(チーム運営)を補助

⑥【人事ローテーションの観点】採用後3年間は外務業務を経験し、採用後4年目からは適性及び要員事情を踏まえ、外務・内務業務への変更があり、各業務ごとに計画的に育成

時給制契約社員

①契約期間を6か月以内とする期間雇用社員

②郵便局等での一般的業務に従事

③時給制

④特定の定型業務に従事

⑤担当業務の変更は予定されていない

⑥班長等として班を総括するなどの業務は行わない

⑦各社員についてスキル評価が行われるが、これは、作業能率評価手当の額に反映

小括

業務の内容自体に、大きな違いはないが、期待される習熟度やスキルは異なり、一般職は勤務年数を重ねた後には応用的な能力、後輩への助言の能力等が求められるという違いがあり、業務に伴う責任の程度についても相応の違いがある

 

イ 「ウ」

 

 

職務の内容及び配置の変更の範囲

一般職

①人事ローテーションの観点からの業務の変更がある。

②異動について、「配属エリアを中心とした「原則、転居を伴う転勤のない範囲」」

時給制契約社員

職場及び職務内容を特定して採用

 

 

ウ 「エ」

 

 

その他の事情

一般職

①コース転換制度があり、一般職についても、一定の要件を満たす者は選考プロセスにより地域基幹職にコース転換をすることが可能

②現に、地域基幹職の新規補充人員の約3分の1程度は、一般職からのコース転換による

時給制契約社員

職場及び職務内容を特定して採用

①選考に合格した場合には、月給制契約社員や正社員となる制度がある

②実際に、平成26年度と平成27年度に正社員登用試験に合格した時給制契約社員の合計は、応募者数1万5494人の約3割に当たる4301人

③他方、時給制契約社員の大半は採用後短期間で退職しており、平成28年度には、勤続3年以内で退職した時給制契約社員は全体の7割以上、勤続1年以内で退職した時給制契約社員は全体の5割以上

 



⑸ あてはめ④:労働条件ごとの検討

 

ア 有給の病気休暇の有無について

 

「ア 前記前提事実のとおり、勤続10年未満の正社員には、私傷病につき90日以内の有給の病気休暇が付与されるのに対し、時給契約社員には、無給の病気休暇10日のみが認められているという相違がある。

 病気休暇は、労働者の健康保持のため、私傷病によって勤務することができない場合に療養に専念させるための制度であり、正社員の病気休暇に関し、これを有給のものとしている趣旨は、正社員として継続して就労をしてきたことに対する評価の観点今後も長期にわたって就労を続けることによる貢献を期待し、有為な人材の確保、定着を図るという観点正社員の生活保障を図るという観点によるものと解することができ、一般職の職務の内容等について、前記(5)において説示したところに照らしても、一定の合理的な理由があるものと認められる。これに対し、時給制契約社員については、期間を6か月以内と定めて雇用し、長期間継続した雇用が当然に想定されるものではなく、上記の継続して就労をしてきたことに対する評価の観点、有為な人材の確保、定着を図るという観点が直ちに当てはまるものとはいえない。また、社員の生活保障を図るという観点について、上記(5)認定の事情から判断することは難しいものの、被控訴人においては、期間雇用社員の私傷病による欠務について、私傷病による欠務の届出があり、かつ診断書が提出された場合には、承認欠勤として処理されており、欠勤ではあるものの無断欠勤ではなく、問責の対象としない取扱いがされており、控訴人についても、これに従って手続がされている(証拠略)。そして、このような場合に、社会保険に加入している期間雇用社員については、一定の要件の下で傷病手当金を受給することができるため、著しい欠務状況でない限り、事実上は、ある程度の金銭的補てんのある療養が相当な期間にわたって可能な状態にあるという事情があるものと認められる。

 以上によれば、被控訴人において、正社員について90日又は180日までの有給の病気休暇を付与し、時給制契約社員については10日の無休の病気休暇を認めるのみであることについて、その相違が、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情に照らして、不合理であると評価することができるとまではいえないというべきである。」

 

イ 休職制度の有無について

 

「イ さらに、休職制度の有無についても、正社員に関しては、前記アに説示したところと同様の理由により、有為な人材の確保、定着を図るという観点から制度を設けているものであり、合理性を有するものと解されるところ、時給制契約社員については、6か月の契約期間を定めて雇用され、長期間継続した雇用が当然に想定されるものではないのであり、休職制度を設けないことについては、不合理なこととはいえない。したがって、この点に関しても、この相違は、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情に照らして、不合理であると評価することができるとまではいえないというべきである。」

 

2 本件雇止めの有効性について

 

「この点に関し、控訴人は、正社員休職制度においては、職務復帰に関する労働者本人の意向・状況確認及び医師の意見聴取手続が行われることとされているのに、期間雇用社員に対してこのような手続きが一切行われないことは、差別的取扱いであり、被控訴人は、控訴人に対し、職務復帰に関する労働者本人の意向・状況確認及び医師の意見聴取を行うべきであったと主張する。しかし、期間雇用社員について、休職制度が設けられていないことが労働契約法20条にいう不合理と認められる労働条件の相違に当たるとはいえないことは、前記1説示のとおりであり、被控訴人が休職制度を前提とする手続を採らなかったことをもって、適正手続を欠くものとはいえない。そして、被控訴人は、控訴人の勤務状況を更新を不適当と認める事情として考慮し、さらに、控訴人が本件雇用契約に基づく契約期間が始まった同年4月から同年8月まで、本件疾病を理由に1日も出勤せず、症状を問い合わせる上司からの電話においても早期の職場復帰について否定的な見通しを伝えており、このような状況のもとで、被控訴人は、控訴人について、その勤務状況や健康状態等に照らして、本件雇用契約における職務を全うできないとの判断に基づき、本件雇用契約を更新しないこととしたものであって、被控訴人が、控訴人に対して職務復帰に関する本人の意向確認をせず、医師の意見聴取をしなかったことについて、適正な手続を欠くものと評価することはできない。控訴人の主張は採用することができない。」

 


【結論】

 

裁判所は、控訴人(第一審原告:時給制契約社員)の本件請求をいずれも棄却した原判決は相当とし、本件控訴を棄却した。

 


【コメント】

 

 

なお、本裁判例についての動画配信にご興味のある方(経営者、社労士先生など)は、

https://www.itm-asp.com/form/?3196

から、ご視聴下さい。

(配信期限は、20214月末(無料)です。期限経過後の視聴にご興味のある方は、rt@tamura-law.comまで、お問い合わせ下さい)

★本メルマガは、当事務所所属の弁護士の(使用者側からの)私見を示したものです。そのため、個別具体的な事実が異なれば、結論は異なります。そのため、個別案件については、事前に外部専門家(弁護士や社労士など)に相談して、当該専門家の助言に従って対応して下さい。  本メルマガの内容に基づいて行動した結果、何等かの損害・損失が発生したとしても、一切賠償等には応じかねますので、あらかじめご了承下さい。

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