新型コロナウイルス感染症への対応について


新型コロナウイルス感染症への対応について

~目次~

0. マニュアル

1. 賃金
  1-1.休業手当<一般論>
  1-2.緊急事態宣言と休業手当<分類>
  1-3.休業手当と同一労働同一賃金 
  1-4.休業手当と正社員の待遇相違
  1-5.雇用保険の特例措置
  1-6.厚生労働省の情報

2. 就業制限と休業
  2-1.就業制限
  2-2.就業制限の解除
  2-3.妊婦と休業

3. 労災と安全配慮義務
  3-1. 社員が新型コロナウイルスに罹患した場合、労災になるか。安全配慮義務として、どのような点に注意すべきか。
  3-2. 安全配慮義務の履行として業界ガイドラインが参考になるが、どのようなものがあるか。

4. 懲戒処分
  4-1. マスク着用の義務付けと懲戒処分

5. 副業
  5-1. コロナ対応と副業

6.整理解雇
  6-1. 整理解雇と同一労働同一賃金

0. マニュアル

新型コロナウイルス感染症をめぐるマニュアルは、次のサイトが参考になります。

京都府のサイト:

但し、濃厚接触者の定義が変更されていますので、注意すべきです。

1.賃金

1-1.休業手当<一般論>

新型コロナウイルスの影響により、(やむを得ず)労働者を休業させるか、この場合休業手当の支給義務はあるのか、等を検討する場面が出てくる可能性は否定できません。このような場合に備え、休業手当にまつわる各要件を、以下のとおり整理します。



種類

不可抗力

労基法26

(休業手当)

使用者の「責めに帰すべき事由」

民法5362

(危険負担)

使用者の「責めに帰すべき事由」

要件(解釈)

①その原因が事業の外部より発生した事故であること

②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

民法上の解釈よりも広く、民法上は使用者の帰責事由とはならない経営上の障害も、天災事変などの不可抗力に該当しない限りは、それに含まれる

故意、過失または信義則上これと同視すべき事由

支給率

(賃金または休業手当)

0

60

100

具体例

(厚労省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」より)

 

①自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合

②「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合

③発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合

 


※注:上記の具体例は、一般的な場合の例であり、個別具体的な事情によって結論が異なり得ることにご留意ください。

※注:当事務所は、労働問題につき使用者側の法律事務所ですので、個別具体的な事情を踏まえ、使用者側の視点での助言(無料メルマガに掲載している一般的内容につき、それを発展させた助言)をさせていただいています。

1-2.緊急事態宣言と休業手当<分類>

休業手当の有無については、緊急事態宣言の解除の有無に応じて、次のような分類を踏まえ、分析すべきです。

 

イ 区域

ア 発症者

 

緊急事態宣言の解除区域

緊急事態宣言区域内

判明した

A 発症者

B 濃厚接触者

C それ以外の労働者

第2

休業要請

継続要請

協力依頼

いずれでもない

A 発症者

B 濃厚接触者

C それ以外の労働者

      →第4

判明していない

B 濃厚接触者

C それ以外の労働者

第3

休業要請

継続要請

協力依頼

いずれでもない

B 濃厚接触者

C それ以外の労働者

      →第5

 

この点について興味をお持ちの方は、当事務所弁護士の見解を次の雑誌に掲載しておりますので、ご一読いただけますと幸いです。

 

「4つのケース別にズバリ解説!新型コロナウイルスに備える労務管理のポイント」

「そら」20205月号(労働調査会様)

https://www.fujisan.co.jp/product/1281682489/

但し、濃厚接触者の定義が変更されていますので、注意すべきです。

1-3.休業手当と同一労働同一賃金

正社員に対し、10割の休業手当を支払い、パート・有期社員に対し、6割の休業手当を支払う、といった対応は、可能でしょうか。

均衡待遇については、次の規制があります。

##################
第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
##################

例えば、休業手当の趣旨は、一般的には、労働者の生活保護、にあります。
そうすると、労働者側から、「正社員であっても、有期・パート社員であっても、生活保護の必要性は同じ。」よって、日本版同一労働同一賃金に違反するとして、正社員と同じ割合の待遇を求める、といった要求が行われることがあります。

この点につき、使用者側として、どのように対応すべきか、にご興味のある方は、メルマガ(無料)をご一読いただけますと幸いです。

1-4.休業手当と正社員の待遇相違

同じ正社員の中において、休業手当の相違を設けても良いのでしょうか。

公序良俗については、民法上、次の条文があります。

##################
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
##################

労働者側から、「正社員同士といえども、不合理な差別を設けた場合、公序良俗違反、不法行為、パワハラ、日本版同一労働同一賃金の原則の類推適用により、違法となる。」といった主張が行われる可能性があります。

この点につき、使用者側として、どのように対応すべきか、にご興味のある方は、メルマガ(無料)をご一読いただけますと幸いです。


1-5.雇用保険の特例措置

東日本大震災の場合、下記のとおり、雇用保険の失業給付を受けることができました。

############

東日本大震災に伴う雇用保険失業給付の特例措置について

「災害時における雇用保険の特例措置」があります。

災害により休業を余儀なくされた方、または一時的に離職を余儀なくされた方が、雇用保険の失業手当を受給できる特例措置があります。

  • 事業所が災害を受けたことにより休止・廃止したために、休業を余儀なくされ、賃金を受けることができない方については、実際に離職していなくとも失業給付(雇用保険の基本手当)を受給することができます。

  • 災害救助法の指定地域にある事業所が、災害により事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた方については、事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても、失業給付を受給できます。
############

なお、他の災害(2019年台風第19号など)の場合にも、上記と同様の対応が行われています。

★今回も、上記と同様の対応が行われることが望まれます。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58819930X00C20A5MM8000/

★ただ、現時点での情報は、次のとおりです(2020年5月13日)。


1-6.厚生労働省の情報

1)新型コロナウイルス感染症に関する厚生労働省の詳細はこちらです。

2)新型インフルエンザ(A/H1N1)に関する平成21年10月30日の厚生労働省の見解はこちらです。

2. 就業制限と休業

2-1.就業制限

帰国者・接触者相談センター等への相談目安が、5月8日、次のとおり、変更されましたので、留意すべきです。

###############
帰国者・接触者相談センター等にご相談いただく際の目安として、少なくとも以下の条件に当てはまる方は、すぐにご相談ください。

☆ 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
☆ 重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
※高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)など)がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方
☆ 上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)

###############

2-2.就業制限と解除

2-3.妊婦と休業

この点については、下記の状況です。

3.労災

3-1.社員が新型コロナウイルスに罹患した→労災になるか。安全配慮義務として、注意すべき点。

社員が新型コロナウイルスに罹患した場合、労災になるか。安全配慮義務として、どのような点に注意すべきか。

 

1 問題の所在

社員が新型コロナウイルスに罹患した場合、労災になるか、また、企業は、安全配慮義務として、どのような点に注意すべきか。が問題となります。


2 判断基準

この点については、次の基準が適用されます(2020430日時点)

 

<国内の場合>

 

分類

労災給付の対象の有無

医療従事者等

患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、 介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。

医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの

感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。

医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの

調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。

この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況 等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。

(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務

(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

(基補発 0428 第1号 令和2年4月 28 日より、抜粋)

https://www.mhlw.go.jp/content/000626126.pdf

 


3 企業の対応
企業としては、例えば、上記ウの場合、少なくとも、次の業務につき、リスク対応策を講じるべきといえます。


 

通達の例示

新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)令和2年5月29日時点版

(ア)

複数の感染者が確認された労働環境下での業務

請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。
なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられます。

(イ)

顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しています。

(ウ)

他の業務

他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断します。

新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)令和2年5月29日時点版より、抜粋)

 

4 業界ごとのリスク対応策

 

具体的には、次の業界団体が出している、ガイドラインを参照しつつ、自社に実現可能か否かを踏まえ、対応策を講じるべきです。  

3-2. 安全配慮義務の履行として業界ガイドラインが参考になるが、どのようなものがあるか。

 

 

業種別

団体名

オフィス

経団連

 

生活必需物資供給

オール日本スーパーマーケット協会

など多数

運送

全日本トラック協会、

日本バス協会、

全国個人タクシー協会

など多数

医療

全日本病院協会

など多数

他の業界

多数(下記のURL参照)

 

上記のURLは、こちらです。また、一部の例示にすぎませんので、詳細は、下記をご参照下さい。

https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline_20200527.pdf

4.懲戒処分

4-1マスク着用の義務付けと懲戒処分

マスク着用を義務付けているにもかかわらず、正社員が、マスクをしないで、会議出席などの業務を行っている。懲戒処分できるか。


1 問題の所在

マスク着用を義務付けているにもかかわらず、正社員が、マスクをしないで、会議出席などの業務を行っている場合、感染拡大リスクがあります。企業として、当該社員を懲戒処分できるか、が問題となります。

2 判断基準

懲戒処分については、いわゆる罪刑法定主義、効力不遡及の原則、一事不再理の原則、行為と処分の均衡、といった点に留意すべきです。


3 企業の対応

現在、マスクを入手することは、(以前ほどではありませんが)困難です。そうすると、当該正社員としては、「マスク着用の義務付けを遵守したい」と思っても、それを守れない、ということになります。

そのため、例えば、「企業が、マスク配布しているのに、マスクを着用しない」といった事情のない限り、実務上、懲戒処分は避けるべきです。

なお最近は、ハンカチその他の素材で、マスクを作ることもできますので、そういった「マスクの作り方」の情報提供(グーグル検索やyoutube検索で出てきます)も、企業の労務管理の一環として、あると思います。

5. 副業

5-1. コロナ対応と副業

新型コロナウイルスによる影響によって、今後、従業員の賃金が下がることが予想されます。そうすると、企業としては、人材流出防止を目的とした、「副業解禁」も選択肢の1つになるでしょう。

副業については、当事務所として外部発信していますので、参考にしていただけますと幸いです。



6.整理解雇

6.1 整理解雇と同一労働同一賃金

新型コロナ対応で整理解雇を考える際、日本版同一労働同一賃金に留意すべきです。
具体的には、人選の合理性を考える際、「正社員だから」、「パート・有期社員だから」といった形式的理由ではなく、職務の内容、変更の可能性、その他の事情を意識した方がリスク対応になります。
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本HPは、当事務所所属の弁護士の(使用者側からの)私見を示したものです。そのため、個別具体的な事実が異なれば、結論は異なります。
そのため、個別案件については、事前に外部専門家(弁護士や社労士など)に相談して、当該専門家の助言に従って対応して下さい。  本HPの内容に基づいて行動した結果、何等かの損害・損失が発生したとしても、一切賠償等には応じかねますので、あらかじめご了承下さい。

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