20年8月:グリーントラストうつのみや事件:使用者側弁護士の労働法メルマガ

今回のメルマガ【2020年8月号】目次

1 (労務×有期社員×人員整理×雇止め)

有期社員を人員整理のため雇止めしたところ、無効とされた例 

(グリーントラストうつのみや事件:宇都宮地判令和2年6月10日)

有期社員を人員整理のため雇止めしたところ、無効とされた例



【判例】

 

事件名:グリーントラストうつのみや事件(宇都宮地裁)

判決日:宇都宮地判令和2年6月10日

 


【事案の概要】

 被告は、地域の自然環境保全や森林保護等を目的に設立された公益財団法人である。原告は、平成24年11月1日、被告に嘱託職員として雇用された。原告及び被告は、平成25年4月1日から平成29年4月1日まで、毎年4月1日に、期間を各1年として契約を更新してきた。原告は、平成30年1月17日、被告に対し、契約の更新の申込みをした。しかし、被告は、雇用期間の満了日である同年3月31日をもって雇止めをすることを通知した(本件雇止め)。これに対し、原告は、同年8月23日、被告に対し、同月22日付け「無期労働契約転換申込書」により、被告との有期労働契約が平成25年4月1日から起算して平成30年4月1日に5年間を超えたとして労契法18条に基づき期間の定めのない労働契約への転換を申し込んだ。

 


【判旨(「」内は判旨の一部抜粋。下線部は引用者による。)】 

1 労契法19条各号該当性

(1) 労契法19条1号該当性

原告及び被告は契約更新を重ねてきたが、そのいずれも、更新時において次回の「更新継続が当然の前提とされていたものではない。」ゆえに、1号には該当しない。

(2) 労契法19条2号該当性

 「原告の業務実態は、」「かなり早い段階から、」「基幹的業務に関する常用的なものへと変容するとともに、その雇用期間の定めも、」「当初予定された3年間(更新を含む)を超えて継続している点で」「雇止めを容易にするだけの名目的なものになりつつあったとみるのが相当である上、本件各労働契約の各更新手続それ自体も実質的な審査はほとんど行われず、単に原告の意向確認を行うだけの形式的なものに変じていた」。

 よって、労契法19条2号の合理的理由がある。


2 本件雇止めは、労契法19条柱書にいう「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」に当たるか。

(1) 判断枠組み

確かに、本件雇止めは、「被告が労契法18条所定の期間の定めのない労働契約の締結申込権の発生を回避する目的で行われたものということができる。しかし、労契法18条所定の『通算契約期間』が経過し、労働者に無期労働契約の締結申込権が発生するまでは、使用者には労働契約を更新しない自由が認められているのであって、上記『通算契約期間』の定めは、使用者のかかる自由まで否定するものではない。そうすると、使用者が上記無期労働契約の締結申込権の発生を回避するため、上記『通算契約期間』内に当該有期労働契約の更新を拒絶したとしても、それ自体は格別不合理な行為ではない。」

 しかし、本件では労契法19条2号の要件を充足しており、「労働者たる原告の雇用継続に対する期待は合理的な理由に基づくものとして一定の範囲で法的に保護されたものであるから、特段の事情もなく、かかる原告の合理的期待を否定することは、客観的にみて合理性を欠き、社会通念上も相当とは認められないものというべきである。」

(2)特段の事情の有無

「確かに、労契法19条各号により雇用継続の期待が保護される有期労働契約においても人員整理的な雇止めが行われることがあり、」「本件雇止めも、かかる人員整理的な雇止めとして実行されたものということができる。そうすると、その審査の在り方(厳格性)はともかく、本件雇止めにも、いわゆる整理解雇の法理が妥当するものというべきであるから、〔1〕人員整理の必要性、〔2〕使用者による解雇回避努力の有無・程度、〔3〕被解雇者の選定及び〔4〕その手続の妥当性を要素として総合考慮し、人員整理的雇止めとしての客観的合理性・社会的相当性が肯定される場合に限り、本件雇止めには上記特段の事情が認められるものというべきである。」


 被告における「非常勤嘱託員の報酬(給与)は、宇都宮市からの補助金によって賄われていた」。「被告は、本件雇止めに当たって、宇都宮市の人事課から原告につき労契法18条1項が適用され、それまでの有期労働契約が期間の定めのない労働契約に転換されないよう人員整理を行うべき旨の指導を受けていたというのであるから、被告には上記人員整理のため本件雇止めを行う必要性が生じていたことは否定し難い。

 しかし、上記原告の業務実態は、本件各労働契約締結のかなり早い段階から、非常勤としての臨時的なものから基幹的業務に関する常用的なものへと変容し、その雇用期間の定めも、雇止めを容易にするだけの名目的なものになりつつあったというのであるから、〔1〕人員整理のため本件雇止めを行う必要性をそれほど大きく重視することは適当ではない上、〔2〕本件雇止め回避努力の有無・程度、〔3〕被雇止め者の選定及び〔4〕その手続の妥当性に関する審査も、これを大きく緩和することは許されないものと解される」。


それにもかかわらず、「被告は、財政援助団体である宇都宮市(人事課)からの指導を唯々諾々と受入れ、本件の人員整理的な雇止めを実行したものであって、その決定過程において本件雇止めを回避するための努力はもとより、原告を被雇止め者として選定することやその手続の妥当性について何らかの検討を加えた形跡は全く認められないのであるから、これらの事情を合わせ考慮すると、人員整理を目的とした本件雇止めには、客観的な合理性はもとより社会的な相当性も認められず、したがって、本件雇止めに上記特段の事情は存在しないものというべきである。」


以上から、「本件雇止めは、労契法19条柱書にいう『客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき』に当たるものというべきである。」



【結論】

 労契法19条に基づく更新強制により、原告及び被告における契約期間を通算した期間が5年を超えた。そして、原告は無期転換権を行使したため、原告及び被告は期間の定めのない雇用契約関係にあることが確認された。



コメント

本件では、(有期契約社員に対する)人員整理的な雇止めについて、整理解雇の法理が妥当する、と判断されました。その上で、いわゆる4要素を総合考慮し、特段の事情の有無、があるか否かが判断基準とされています。

 

使用者に不利な裁判例ですが、労働契約法192号の要件を充足する場合の、人員整理的な雇止めの基本的な考え方について参考になります。




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